「私が頼れるのはあなただけ。おねがい、力を貸して」
こうした甘い言葉を、SNSやマッチングアプリを通して送ってくる外国人に心当たりはありませんか。
こちらを信用させ、恋に落としたところで、金銭を要求する。
国境を越えて行われる、感情を利用した金銭詐欺行為を、国際ロマンス詐欺と言います。
国際ロマンス詐欺被害は世界各地で起きており、誰でも被害にあう可能性があります。
詐欺師たちによる巧妙な手口と、国際ロマンス詐欺の見分け方、万が一被害にあったときの対策など、探偵目線で解説します。
国際ロマンス詐欺かもしれない危険信号とは
国際ロマンス詐欺は巧妙であり、被害にあう方は決して少なくありません。
しかしそれでも、国際ロマンス詐欺かもしれないと思わせる危険信号は必ずあります。
それらを見逃さないために、注意深く見ていきましょう。
プロフィールの不自然さ
モデルのような美しい写真や、不自然に加工された写真を使っているケース。
別のSNSや、ネットでの拾い画像を使っていることが多いです。
ただしメイクや照明がばっちり作り込まれた写真だと、嘘だとバレる可能性が高いため、魅力的かつ自然体であるということを重視して写真を選ぶ詐欺師もいます。
背景と人物の不釣り合いさや、影の不自然さなどがある場合は、合成写真の可能性もあるでしょう。
また、よく使われるプロフィールとして、軍人、医師、実業家などの安定した職業が選ばれがちです。
これらの職業は、信頼性が高く、収入も安定しているイメージがあるため、被害者の警戒心を下げる効果があります。
国際ロマンス詐欺師たちは、他者に魅力的にみせるための技を熟知しています。
不自然に魅力的すぎるプロフィールには要注意です。
言葉遣いの不自然さ・話していた内容の矛盾
日本語が堪能と言いつつ、不自然な表現や、翻訳ソフトを使ったような文章が目立つ場合があります。
自称英語話者であるのに、不自然な英語を使うというのも特徴です。
不自然な言葉を扱いながら、こちらを信用させようと甘い言葉や嘘を吐きます。
過度なほめ言葉であなたの気分を良くさせ、その隙につけ入るのです。
「一緒に幸せな家庭を築こう」「夢を叶えよう」など、具体的な根拠のない夢物語を語るのも特徴のひとつになります。
そして、国際ロマンス詐欺師が相手にしているのはあなただけではないため、以前話していた内容と矛盾する情報が出てくることもあります。
その矛盾にどれだけ気づけるかということが、詐欺師かどうか見分けるうえで大切になってきます。
金銭要求の理由と送金方法
国際ロマンス詐欺師は信頼関係を築くのに長い時間をかけ、信用を勝ち取ったところで金銭要求をします。
すぐには金銭を要求しません。
金銭要求の理由として、医療費、渡航費、仕事上のトラブルなどをあげつらいます。
また、国際ロマンス詐欺師の身の上話は悲惨なものが多く、「幼いころに両親とも亡くした」「闘病中の妹がいる」などの嘘をついて、同情を誘います。
国際ロマンス詐欺師は、送金方法にこだわるのも特徴。
追跡が困難な、国際送金サービス、仮想通貨、ギフトカードでの送金を指示してくることが多いです。
会うことを拒否する
「会いに行こうとしていたけれど、急な事故で行けなくなってしまった」
「仕事が忙しいから、なかなか会うことができない」
など、国際ロマンス詐欺師は会うことを拒みます。
前述したセリフなどは、そのまま金銭要求にも繋がるでしょう。
ただし詐欺師も、会わなさすぎは疑われているとわかっているので、時折電話を提案します。
電話であれば、声を変えることができるからです。
つまり、性別を偽ることもできます。
電話番号はネット上で購入できる場合もあり、とある国際ロマンス詐欺師はアメリカの携帯番号を購入し、ナイジェリアにいながらアメリカ国内からの着信として電話をしていました。
国際ロマンス詐欺の手口
国際ロマンス詐欺はターゲットの心理を巧みにあやつり、段階的に金銭をだまし取ります。
この章では、初期段階・中期段階・後期段階の3つの段階にわけて、国際ロマンス詐欺師の手口を解説します。
初期段階:出会いと信頼関係の構築
〇ターゲット発見
この段階ではターゲットを見つけ、短期間で親密な関係を築き、信頼を得ることを目指します。
マッチングアプリ、SNS、オンラインゲーム、出会い系サイトなど、多くの人が利用するプラットフォームでターゲットを探し、アプローチ。
メッセージのやり取りが始まると、すぐに「運命を感じる」「特別な人だ」などと過度なほめ言葉や愛情表現をしていきます。
頻繁なメッセージのやり取りで、相手の趣味や関心事、過去の恋愛経験などを聞き出し、共通点を見つけて感情的なつながりを深めようとします。
〇連絡先の移行
出会ったプラットフォームから、LINE、WhatsApp、Facebook Messengerなどのプライベートなメッセージアプリへすぐに移行しようとします。
これは、詐欺行為がプラットフォーム運営側に検知されにくいようにするためです。
移行後も、ターゲットの個人的な情報(仕事、家族構成、経済状況、将来の夢など)を巧みに聞き出し、後の詐欺計画に利用します。
中期段階:緊急事態発生と金銭要求
〇金銭要求への布石
自身の不幸な状況や困難の吐露をします。
自身の過去の不幸な出来事や、現在の仕事や生活での困難を語り、ターゲットの同情を誘います。
「お金には困っていないが、今は手元にない」「一時的な問題だ」などと、将来的な金銭的な余裕があるかのように見せかけ、ターゲットを安心させつつ、現在の困難を強調するのです。
〇具体的な未来の提示と期待感の増幅
「あなたに会うために、もうすぐそちらへ行ける」「一緒に事業を始めて、幸せな暮らしをしよう」など、具体的な約束をして期待感を高めます。
〇最初の金銭要求
多くの場合、最初の金銭要求は少額で緊急性を伴うものです。
「少しだけ困っている」「すぐに返せる」「これは一時的なものだ」といった言葉で、ターゲットが心理的なハードルを越えやすいように仕向けます。
〇秘密の要請
「これは2人だけの秘密にしてほしい」「お金のことだから、ほかの人には言わないで」と頼み、ターゲットが周囲に相談することを阻みます。
後期段階:関係の維持と逃亡準備
〇金銭要求の多様化と高額化
一度送金されると、さらに別の、より高額な名目で金銭を要求し始めます。
- あなたに会うための渡航費用
- 儲かる話を持ち掛けて投資を促すビジネス関連費用
- 緊急性が高いトラブル解決費用
- 家族が自分が病気にかかってしまったという名目での医療費
〇感情的なプレッシャーと脅迫
ターゲットが送金をためらったり断ったりすると、詐欺師は態度を変え、「僕(私)を愛していないのか」「見捨てるつもりか」「信じていたのに裏切られた」などと感情的に非難し、罪悪感を抱かせようとします。
時には、「お金を送らないと、僕(私)の命が危ない」「会社が倒産する」などと、ターゲットに責任があるかのような脅しをかけてきます。
〇周囲への不信感の植え付け
ターゲットが家族や友人に相談しようとすると、「彼らは私たちの愛を理解しない」「私たちの関係を壊そうとしている」などと吹き込み、周囲からの助言を拒絶させます。
〇逃亡準備
ターゲットからこれ以上お金が引き出せないと判断すると、詐欺師は連絡を途絶えさせたり、アカウントを削除したりして、姿を消します。
また、被害者が詐欺に気づき警察などに相談すると、それまで優しかった態度が一変、罵倒したり、脅迫したりすることもあります。
国際ロマンス詐欺の見分け方
国際ロマンス詐欺の手口がわかったところで、その見分け方も見ていきましょう。
見分けるためにできることは以下の3点です。
逆質問をする
詐欺師たちはターゲットを操るために、あなたの家族構成や経済状況、仕事、趣味など、個人的な情報をしつこく聞き出そうとします。
しかし逆に、自分のことについてはあまり話したがりません。
ぼろが出るのを恐れているためです。
「どうして会えないの?」
「あなたはどんな仕事をしているの?その仕事で一番やりがいがあるのはなに?」
など、具体的な質問を投げかけることによって、詐欺師の矛盾に気づくきっかけになるかもしれません。
画像検索をする
前述したとおり、プロフィール画像や投稿画像は拾い画であったり、合成写真である場合がほとんどです。
そのため、Google画像検索やTinEyeなどのツールを使って、画像検索を行いましょう。
複数のツールを使うことで、見落としを防げます。
他のSNSで使われている写真がないか調べるのも効果的です。
アカウントが投稿しているその他の写真(仕事現場や風景など)もチェックすることをおすすめします。
これらの画像が他のサイトから盗用されている場合、詐欺の可能性が高いでしょう。
ビデオ通話を提案してみる
音声だけでは偽造される場合もあるため、ビデオ通話を提案してみましょう。
詐欺師であれば、顔や性別を偽っていることがほとんどのため、間違いなく応じてくれません。
国際ロマンス詐欺師の特徴として、過度の愛情表現がありますが、それなのにビデオ通話さえ応じてくれないのは不信感を抱くのに十分です。
万が一被害にあってしまったら
「すでに金銭を渡してしまった」「何度も何度も金銭を要求されている」といった場合は、迅速に対応することが肝要です。
詐欺にあったかもしれないと気づいた直後は、自分に不甲斐なさを感じて、周囲の人たちに相談できないかもしれません。
それでも、信頼できる第三者に相談することが、二次被害を防ぐことに繋がります。
本章では、具体的な相談先をご紹介します。
消費者生活センターへ相談
〇消費者ホットライン #188
消費者トラブル全般について相談を受け付けています。
詐欺被害に関する相談受付と、解決に向けたアドバイスをしてくれ、具体的な状況に応じた関係機関(警察、弁護士など)への連携や紹介も請け負ってくれます。
警察への相談
〇相談専用電話 #9110
各都道府県警察本部に繋がる相談窓口です。
詐欺の手口や対策について相談できます。
〇サイバー犯罪相談窓口
各都道府県警察に設置されており、インターネットを利用した詐欺について相談できます。
通報(サイバー事案に関する通報を行うもの)、相談(サイバー事案に関するアドバイスを求めるもの)、情報提供(サイバー事案に関する情報を提供するもの)をすることが叶います。
相談時の準備としては、以下の通りです。
- 相手とのやり取りの履歴(スクリーンショット、メール、チャットアプリの履歴など、できるだけ多く保存)
- 送金記録(銀行の取引明細、送金サービス会社の領収書、仮想通貨の取引履歴など)
- 相手のプロフィール情報(名前、写真、利用していたサイト・アプリのアカウント情報など)
- 被害状況を時系列でまとめたメモ
探偵に依頼
探偵は、国際ロマンス詐欺被害者が次のステップ(警察への相談、弁護士への依頼)に進むための強力なサポート役になります。
探偵ができることは以下のとおりです。
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相手の身元特定: 詐欺師が使用しているアカウント情報、メールアドレス、電話番号、SNSアカウントなどを調査し、身元の特定を試みる。
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詐欺師の行動パターン調査: 詐欺師がどのような手口で詐欺を行っているのか、過去の事例や類似の手口を調査し、証拠を集める。
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送金先の情報収集: 送金先の口座情報や送金サービスの情報などを調査し、資金の流れを追跡。
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詐欺グループの特定: 詐欺グループが存在する場合、その組織構造や関係者などの情報を収集。
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被害額の確定: 詐欺によって失った金額を正確に把握するために、送金記録や借入状況などを確認。
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調査報告書の作成: 収集した情報や証拠をまとめ、裁判や警察への届け出に必要な調査報告書を作成。
国際ロマンス詐欺かもと思ったら
国際ロマンス詐欺は巧妙ですが、必ず危険信号が存在します。
見分けるためには、これらの情報をもとに冷静な判断と早期の対応を心がけることが、重要になります。
国際ロマンス詐欺は決して、遠い国の話ではありません。
少しでも疑わしく思ったときは、ぜひ一度ご相談ください。
当事務所では、24時間365日、無料相談窓口にて相談を受け付けています。
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