勇気を振り絞って警察署に向かったのに、被害届を受理してもらえない……。
犯罪被害に遭って心身ともに傷ついている中で、このような対応をされた方もいるのではないでしょうか。
被害届が受理されなければ、犯人が野放しになってしまうため、不安や焦りの感情に襲われるのも無理もありません。
この記事では、警察が被害届の受理に慎重になる理由を解説します。
受理させるための方法や、被害届に変わる手段なども紹介しているため、事件化できずに悩んでいる方は参考にしてください。
被害届が受理されない理由
犯罪の被害に遭ったにも関わらず、警察が被害届を受理してくれない……。
その背景には、警察組織側の事情が関係しています。
この章では、被害届が受理されない代表的な理由を解説していきます。
事件性が低いと判断されたため
警察に被害を相談した際、「事件性が低い」と判断された場合、被害届が受理されないことがあります。
当事者間の話し合いで解決できる事件や、明確な暴力・脅迫を伴わない口論、金銭トラブルなどがこれに該当します。
民事不介入の原則があるため
民事不介入の原則とは、警察などの国家権力が、個人間の問題には介入しないという原則です。
契約トラブルや家族間の問題などがこれに当てはまります。
しかし、民事トラブルに見えたとしても、実際は刑法に触れる悪質なケースだった事例も珍しくありません。
民事不介入の原則を理由に、被害届を受理してもらえなかったとしても、犯罪である可能性を訴え続けることが大切です。
客観的な証拠が不足しているため
警察が被害届を受理しない最大の理由として、客観的な証拠の不足が挙げられます。
被害者の申告のみで、犯人を特定・起訴するのは困難です。
また証拠がなければ、被害者の証言が真実なのかも判断できません。
これらの要因が重なり、警察が被害届の受理に慎重になる場合があります。
被害届が受理されず、最悪の事態を招いた「桶川ストーカー殺人事件」
過去には、警察が被害届の受理をためらったり、相談に真摯に対応しなかったりしたことがきっかけで、取り返しのつかない事態に発展した事件もあります。
その代表的な例が「桶川ストーカー殺人事件」です。
被害者の女子大生は、元交際相手からの執拗なストーカー行為を警察に何度も相談し、被害届も提出していました。
しかし、警察は「男女間のトラブル」として取り合わず、被害届も受理しませんでした。
その結果、被害者である女子大生は命を奪われたのです。
この事件からわかるように、警察の対応が遅れれば、被害はより深刻になります。
そのような事態を防ぐためにも、いち早く被害届を受理してもらう必要があります。
一刻も早く被害届を受理してもらうには
被害届が受理される確率を上げるには、事前に周到な準備をする必要があります。
意識すべきポイントは下記のとおりです。
-
事実関係を時系列順に整理する
-
客観的な証拠を1つでも多く集める
-
「処罰を求める意思」を明確に伝える
-
担当者の所属・氏名を確認する
特に、被害を客観的に証明できる証拠を集めることが大切です。
被害の深刻度などが伝われば、緊急度の高い事案であることが伝わり、被害届が受理されやすくなります。
被害届が受理された後も、迅速に対応してもらえる可能性があるため、被害の証拠は1つでも多く確保しておきましょう。
受理されない場合は告訴も視野に
何度相談しても被害届が受理されない場合は、告訴に踏み切ることも検討しましょう。
告訴とは、被害者やその法定代理人などが、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して訴追を求めることです。
被害届が被害事実の「申告」であるのに対し、告訴は犯人の処罰を求める強い意思表示であるという違いがあります。
告訴状が正式に受理されれば、警察には捜査を行う法的な義務が生じるため、捜査を開始せざるを得ない状況を作ることが可能です。
しかし、告訴状の作成には法的な要件があります。
個人での作成は困難なため、弁護士などの専門家に依頼するようにしてください。
1人で対応できないときは専門家に相談を
被害に遭った直後は、精神的に大きな負担を抱えている方がほとんどです。
被害届の提出に関する手続きを1人で進めるのが、難しい場合もあるでしょう。
証拠集めが難航したり、何から手をつけたらいいかわからなかったりする場合は、専門家に相談することも視野に入れてみてください。
事件化するためのサポートを受けたいとき
事件化するときのサポートを受けたい時は、弁護士に相談してください。
被害を客観的に証明できる証拠は何か、証拠を集める際の注意点は何かなど、具体的なアドバイスをもらうことができます。
さらに、警察署への動向や被害届・告訴状の作成代行も依頼可能です。
経済的な余裕がない場合は、法テラスで無料の法律相談を受けたり、弁護士費用の建て替え制度を利用したりする手もあります。
当事務所でも、経験豊富な弁護士を紹介することが可能なため、お気軽にご相談ください。
証拠集めが難航しているとき
証拠が思うように集まらない場合は、探偵事務所への依頼も視野に入れてみてください。
専門知識やノウハウを総動員して、あなたの被害を客観的に証明する証拠を収集します。
証拠がまとめられた調査報告書があれば、弁護士や警察などの第三者にあなたの被害を伝えられるようになります。
被害届が受理される可能性が高まるうえ、専門機関の協力も得やすくなるでしょう。
受理されなくても諦めず、次の一手を
今回の記事では、警察が被害届を受理しない理由と、その状況を打開するための具体的な方法について解説しました。
被害届が受理されない背景には、事件性が低い、証拠が足りないなどの警察側の事情があります。
しかし、過去の痛ましい事件が示すように、初期対応の遅れが最悪の事態を招くことも考えられます。
まずは被害を客観的に証明できる証拠を集め、警察が真剣に向き合ってくれる状況を作りましょう。
また、被害届がどうしても受理されない場合は、告訴に踏み切る手もあります。
当事務所でも、被害を証明する証拠集めなどの依頼を請け負っているため、難航している方はご相談ください。