「元彼からの連絡が止まらない……これって普通?」
「別れた途端に嫌がらせが始まった。どうすればいいの?」
「大好きだった彼が怖い存在になってしまった」
元交際相手や元配偶者からの連絡や行動に不安を覚える人は、少なくありません。
警察庁の統計では、ストーカー事案の約半数が、元交際相手や元配偶者によるものと報告されています。
恋愛感情がいつの間にか執着や怒りに変わり、トラブルへと発展するケースは珍しくありません。
この記事では、実際に報告された事例とともに、恋愛執着トラブルから身を守るための具体的な対処法を明確にご紹介していきます。
どこからが“ストーカー行為”?|法律が定める基準
「ただ気持ちを伝えたいだけ」
「話し合いをしたいだけ」
「元気にしているか心配しているだけ」
加害者側がそう言い訳をしたとしても、それが相手にとって恐怖や不安を与える行動であれば違法行為の可能性があります。
日本のストーカー規制法では、以下の3点を満たす場合に「ストーカー行為」として処罰対象になります。
要件 | 内容 |
---|---|
① 動機 |
|
② 行為内容 |
|
③ 反復性 | 上記行為を繰り返し行うこと |
2021年の法改正では、「位置情報の無承諾取得」(GPS装着やスマホの追跡)が新たに規制対象として明記されました。
実際に会っていなくても、遠隔で動きを把握しようとする行為自体が違法となりました。
恋愛の延長線上で行われる行動は、周りから“愛情の表現”と勘違いされやすいことが多いです。
また、被害者の恐怖や精神的負担が見過ごされることも少なくありません。
「どこまでが許されて、どこからが違法なのか?」
ストーカー規制法は、この線引きを明確にする法律です。
『ストーカー規制法』の具体的な規制行為
ストーカー規制法では、次のような行為を“違法なストーカー行為”としています。
規制行為の種類 | 具体的な内容 |
---|---|
つきまとい・押しかけ |
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面会・交際の強要 |
断られても迫り続ける
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威迫・脅迫的な言動 |
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過度な連絡 |
しつこく連絡する
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行動監視・威圧 |
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名誉の侵害 |
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プライバシー侵害 | プライベートな写真や動画を勝手に公開・送信する |
嫌がらせ物の送付 |
不快なものを送りつける
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強制的な契約・購入 | 「これを買え」「契約しろ」と無理やり押し付ける |
位置情報の追跡 | スマホアプリやGPS装置を仕込んで居場所を勝手に調べる |
これらは、相手が嫌がっている意思を示した後も続ける場合、すべて規制対象となります。
本人が「これは愛情表現の一部」と思っていても、受け取る側が「恐怖」や「不安」を感じれば、違法になります。
参考:警視庁『ストーカー規制法』
なぜ恋愛感情が憎しみに変わるのか|心理パターン解説
恋愛の感情が、なぜ憎しみや攻撃性に変わってしまうのでしょうか?
その背景にあるのは、「執着」や「自己愛」です。
ここでは、愛情が憎しみに変化してしまう流れを表にしました。
この表を見て「当てはまるかも」と思ったら、自分を守るための行動を取るべきタイミングです 。
心理段階 | 心理・行動の特徴 |
---|---|
① 恋愛感情 | 「この人しかいない」と理想化・依存が強まる |
② 関係の揺らぎ | 距離や変化に不安や焦りが生まれる |
③ 混乱と否認 | 別れを受け入れられず現実を否定する |
④ 自己否定 | 拒絶=自分の価値が否定されたと感じる |
⑤ 不安と怒りの蓄積 | 「なぜ私が?」という怒りと不安が混ざる |
⑥ 被害意識の高まり | 「裏切られた」という思い込みが強くなる |
⑦ 歪んだ正義感 | 「罰しなければ気が済まない」と思い始める |
⑧ 執着・監視行動 | SNS監視・つきまといなどに発展 |
⑨ 加害行為 | リベンジ投稿・脅迫・ストーカー行為へ |
ポイント
- 自分の価値を他者との関係性でしか感じられない
- 「拒絶された」を「自分の存在を否定された」と極端に受け止める
- 愛情ではなく「自分を守るための暴走」として行動する
実際に起きた恋愛執着トラブル3つの事例
恋愛の終わりが、相手の執着や逆恨みによって恐怖に変わることは少なくありません。
ここでは、実際に報告された3つの事例をもとに、恋愛の執着が引き起こすトラブルのリアルをご紹介していきます。
「少しおかしいかも」と感じた段階で対策を始めることが、被害の拡大を防ぐ第一歩になります。
ぜひ、ご自身の状況と照らし合わせながら、一つひとつの事例をご覧ください。
■ 実例①:リベンジポルノで人生を壊された女性(東京都)
交際中に密かに撮影された性行為の動画が、別れから2年後にアダルトサイトへ流出。
被害女性はSNSで「動画が出回っている」と知らされ、被害に気付きました。
元交際相手Aが動画を知人Bに15万円で売却し、Bが編集・販売していたことが判明します。
動画は、最大183の国内外サイトに拡散されてしまいました。
職場やSNSでも実名・勤務先を晒され、動画リンクが送られてくるなど二次被害が続出します。
被害女性は退職を余儀なくされ、PTSDを発症。
外出も困難になり、日々ネット検索を繰り返す生活が続いています。
【加害者の処罰】
リベンジポルノ防止法違反で逮捕(懲役2年・執行猶予4年の有罪判決)
【逮捕の決め手】
警察が動画投稿サイトに情報開示を求めたことで、IPアドレスや登録情報が特定され、加害者の身元が判明しました。
参考:NHKみんなでプラス
■ 実例➁:スマホと車に取り付けられたGPSでのつきまとい(福岡県)
日常的なDVを受けていた被害者の女性は、警察に保護された後も元夫による執拗な監視に悩まされていました。
引っ越し先で偶然にも同じアパートに元夫が現れます。
不審に思って警察に相談したところ、女性の車にGPS機器が取り付けられていたことが判明。
市役所や自宅周辺でも元夫の車を目撃するなど、継続的な監視が行われていました。
【加害者の処罰】
ストーカー規制法違反の疑いで逮捕(詳細な刑罰は未公表)
【逮捕の決め手】
車に取り付けられたGPSの存在が警察により発見され、位置情報の取得が監視行為と判断されて立件につながりました。
法改正のきっかけに
本事例は法廷でも争点となり、最終的に法改正のきっかけにもなりました。
控訴審の福岡高裁は「GPSによる監視は見張りに該当しない」として逆転判決を下します。
しかし同年2021年中にストーカー規制法が改正され、無承諾での位置情報取得そのものが明確に違法行為になりました。
参考:RKB毎日放送、警察庁『ストーカー規制法が改正されました!』
■ 実例➂:職場・自宅で複数回に渡る待ち伏せ(静岡県)
元交際相手は、被害女性の職場や自宅周辺で複数回にわたり待ち伏せを繰り返してました。
女性は職場で男の姿を目撃し、不安を感じて関係者に相談。
通報を受けた警察が捜査に乗り出し、翌日に男を逮捕しました。
警察によると、この男女の間では過去にも2度にわたってトラブルがあり、すでに警察の介入を受けていたとのことです。
【加害者の処罰】
ストーカー規制法違反の疑いで逮捕(容疑認否は現時点で非公表)
【逮捕の決め手】
職場の同僚の目撃証言と女性からの通報により警察が捜査し、男の居場所を特定して逮捕に至りました。
参考:テレビ静岡
執着トラブルの段階別「危険度チェックリスト」
執着トラブルは、最初はささいな違和感として現れます。
しかし、相手の気持ちがこじれていくと、少しずつ深刻になっていきます。
そのため、「これは普通の未練?それとも危険な兆候?」と迷う場合も少なくありません。
そこで今回は、相手の心理の段階ごとに整理した「危険度チェックリスト」を作成しました。
複数の項目に当てはまるようなら、それはあなたの感じている不安が “根拠のあるサイン” かもしれません。
今の状況と照らし合わせて、ぜひチェックしてみてください。
チェック項目 | なぜ危険か |
---|---|
➀「別れてもずっと好き」と繰り返し伝えてくる |
自己中心的な依存傾向の表れ。 相手の意思を無視している兆候あり。 |
②無断でプレゼントを送り続ける | 「気持ちを伝えたい」という一方的な押しつけ行動。 |
➂SNSの投稿に即座に反応・監視している | 位置情報や交友関係の把握を目的とした監視癖がある可能性あり。 |
➃別れ話のあとに急に態度を変える | 愛情から攻撃性に転じる兆候の一つ。 |
⑤家族や職場に接触しようとする | 自分の思い通りにいかない怒りを、周囲にぶつけようとする行動。 |
今すぐできる「身を守るための7つの行動リスト」
突然の連絡や不審な行動に「もしかして…」と感じたとき、すぐに備えることが被害の拡大を防ぎます。
ここでは、今すぐ実践できる「自分を守るための7つの行動」をリスト化しました。
- 証拠を必ず保存する
- 連絡先・SNSをブロックする
- できるだけひとりで行動しない
- 家のインターホンはそのまま応答しない
- 第三者に状況を共有する
- 住所・生活圏を変える
- 警察や専門機関に相談する
少しの意識と行動で安全性が大きく変わります。
少しでも危険を感じたら、「まだ大丈夫」と思わずにできることから始めてみてください。
行動 | 解説 |
---|---|
➀ 証拠を必ず保存する | メール・SNS・通話履歴など、証拠は警察への相談時に必須。 |
② 連絡先・SNSをブロックする | 接点を断つことで相手のエスカレートを抑止する効果も。 |
➂ ひとりで行動しない |
特に通勤・帰宅は複数人で。相手に“狙いにくさ”を印象づける。 |
➃ 家のインターホンはそのまま応答しない |
確認せずドアを開けることは危険。録画機能付きのモニターが有効。 |
⑤ 第三者に状況を共有する | 家族や友人に相談し、客観的に判断してもらう。 |
⑥ 住所・生活圏を変える | 最終手段ではあるが、安全確保を最優先に。 |
⑦ 警察や専門機関に相談する | 法的対応が必要だと少しでも感じたらすぐに行動を。 |
参考:警察庁『ストーカー・配偶者からの暴力事案を始めとする恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案への対応』
恋愛執着トラブルを相談できる5つの窓口
恋愛の執着トラブルを相談できる窓口を、5つご紹介します。
相談をためらう方が多いですが、「大げさかも?」と思った時点で相談すべきケースが少なくありません。
恋愛感情が憎しみに変わると、次第にエスカレートしていく傾向があります。
早めの相談が被害を最小限にできることが多いため、相談窓口の利用をおすすめします。
相談窓口 | 連絡先 |
---|---|
DV相談ナビ | #8008(はれれば) |
DV相談+(プラス) |
※365日、24時間対応 |
女性相談支援センター |
#8778(はなそうなやみ) ※平日・土日祝10:00~16:00 |
警察(相談ダイヤル) |
#9110 (各都道府県で異なります。) |
警察(緊急・通報ダイヤル) | 110 |
また、最寄りの警察署でも恋愛の執着トラブルに関する相談ができます。
24時間いつでも駆け込めるため、身の危険を感じたら第三者とともに訪れてください。
「警察に相談するほどじゃない…でも、見張られてる気がする」
「証拠がないままでは誰にも信じてもらえない…」
そんなときは、探偵事務所にご相談ください。
探偵事務所は“第三者の目”で状況を確認し、必要に応じて証拠収集をサポートします。
どのように調査や対策が進むのかはこちらでご確認いただけます。
参考:政府広報オンライン『DV(配偶者や交際相手からの暴力)に悩んでいませんか。一人で悩まず、お近くの相談窓口に相談を!』、政府広報オンライン『ストーカーは犯罪はんざいです! 被害ひがいを受うけたらすぐ警察けいさつに相談そうだんを』、DV相談プラス 内閣府『DV相談プラス プラス相談箱』、内閣府男女共同参画局『DV相談ナビについて』、厚生労働省『困難な問題を抱える女性の相談窓口(女性相談支援センター)』
恋愛執着トラブル相談前に作っておきたい「状況整理シート」
恋愛や別れをきっかけとしたトラブルを相談する際には、事前に状況を整理しておくことをおすすめします。
次のような「状況整理シート」を参考に、できる範囲で書き出しておきましょう。
このシートがあるだけで相談する際にパニックにならず、警察も状況把握をしやすくなります。
項目 | 記入内容の例 |
---|---|
相手の名前・連絡先 (わかる範囲で) |
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交際期間・別れた時期 |
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受けた迷惑行為の内容・日時 |
被害の状況を時系列で整理
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手元にある証拠 |
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現在の状況 |
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第三者への相談状況 |
家族・友人・上司・支援団体・警察などに相談したかどうか |
希望する対応 |
|
参考:政府広報オンライン『ストーカーは犯罪はんざいです! 被害ひがいを受うけたらすぐ警察けいさつに相談そうだんを』
まとめ
恋愛関係が終わったあと、相手の執着がトラブルへと発展するケースは決して珍しくありません。
「まだ好きだから」「話がしたいだけ」といった言葉に惑わされず、自分の不安や違和感に正直になることが大切です。
無理に理解しようとせず、まずは自身の安全を最優先にしましょう。
少しでも「おかしい」と感じたら、その直感が身を守るための第一歩になります。
早めの対応で、被害の拡大を防ぎましょう。
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